2017-08-11 00:00 | カテゴリ:中国
■【石平のChina Watch】氾濫する「公印偽造」 政治権力と国民との暗闘…「最後の勝者」はどっちだ

2017.8.10 産経ニュース

 今月1日付の中国『法制日報』が興味深い記事を掲載した。中国で今「公印偽造」が氾濫して大問題となっている、という内容である。

 全国各地の専門店へ行ってそれなりの代金を支払えば、どんな公印でも簡単に入手できるのだという。大学や病院、上場企業の公印はもとより、中央官庁、地方政府の公印まで金額次第で作ってもらえる。地方政府の公印なら、30元程度(日本円で500円前後)で十分である。

 一体どういう人がどういう目的で公印を作っているのか。『法制日報』は1つの事例をあげている。ハルビン市某医学院4年生の陳君は卒業を間際に悩みを抱えていた。大学の規定では卒業するためにまず、どこかの病院で実習し、そこから「実習済み証明書」をもらわなければならない。しかしこの就職難の時代、「就活」に奔走していた陳君には実習にいく余裕はなかった。それではどうするかというと、解決法は簡単だ。10元程度のお金を出して某医院の公印を作ってもらい、自分のパソコンで作成した「証明書」に捺印(なついん)すれば一件落着である。

 『法制日報』が挙げた陳君の例はおそらく、偽造公印を利用した犯罪の中で最も「かわいい」部類のものであろう。今年7月の新聞記事を検索してみても、公証部門の公印を偽造して銀行から無担保で14億元の融資をだまし取った無職の男▽薬品企業が医薬品認可担当の政府部門の公印を偽造して有効期限を過ぎた薬を販売に出した▽受刑者の親族が病院の公印を偽造して「病気証明書」を作り、「外部治療」と称して受刑者を刑務所から出所させた▽大学の教師と職員が結託して、大学の公印を偽造し「卒業証書」を乱造して量販した例などなど、中国人民の“知恵の深さ”を示してくれた実例が次から次へと出てくる。

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 前述の陳君の例のように、普通の大学生がいとも簡単に公印偽造に手を染める事態になっていることをみれば、今の中国では、こうした犯罪が人民の社会的生活の一部となっている感がある。社会からの幅広いニーズがあるから、公印偽造が一種の「産業」として繁盛しているのである。

 今年6月、呼和浩特(フフホト)市で警察が公印・公文書偽造の「専門店」を突撃捜査したところ、偽造中の「公印」430点と「公文書」420点が見つかった。昨年12月には漢中市の警察が同じような専門店の製造拠点に踏み込むと、公印偽造専用の設備2セットと、中央官庁のものを含めた偽造公印1千点以上がそこにあったという。

 このようにして、業者が白昼堂々と公印を偽造し、利用者は気軽にそれを買って使う。それが今の中国における「公印偽造市場」の実情である。その背後には、社会全体のモラルの低下とともに、中国共産党政権が作り上げた厳しい「管理社会」への反動があるのではないかと思う。

 政権は独裁体制維持のためには、人々の社会生活を隅から隅までその管理下におかなければ気が済まない。その手段の一つが企業や各種団体や個人の活動に対する厳しい認可権の行使である。

 認可権の象徴はすなわち公印である。企業や団体や個人がこの社会の中で生きていくためには、いつでもどこでも、政府部門や公共機関に公印を押してもらわなければ何もできない。

 政権によって強いられたこのような不自由さから逃れるためには、賄賂を贈るのも方法の一つだが、より一層簡単なやり方は、権力の象徴である公印そのものを偽造することだ。「上に政策あれば下に対策ある」と言われるこの国では、政治権力と国民とのこのような暗闘がつきものである。

 「最後の勝者」となるのはいったいどっちの方だろうか。

               ◇

【プロフィル】石平 せき・へい 1962年、中国四川省生まれ。北京大学哲学部卒。88年来日し、神戸大学大学院文化学研究科博士課程修了。民間研究機関を経て、評論活動に入る。『謀略家たちの中国』など著書多数。平成19年、日本国籍を取得。

引用:産経ニュース

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